診療科別専門医療

食物アレルギー

1)食物アレルギーとは

青魚のサバやエビを食べ2~3時間して、顔や体が痒くなり皮膚に赤いじん麻疹が出て腫れることがあります。普通、このじん麻疹は数日、出たり引いたりして消えていきますが、時には呼吸困難、嘔吐・下痢、意識障害となり重症のアレルギー発作、別名アナフィラキシーが起き、生命に関わることがあります。その中で食べ物が原因となるアレルギーを食物アレルギーと呼びます。

この食物アレルギーと思われる病状は、紀元前5世紀のギリシャのヒポクラテスがチーズアレルギーについて記載しています。

本邦で食物アレルギーが注目されるようになったのは、小児の卵によるアナフィラキシーが相継いだ1980年代からです。1990年代には食物アレルギーが関与するアトピー性皮膚炎や運動してアナフィラキシーを起こす食物アレルギーが話題となり、その後も小児を中心に食物アレルギーの患者の増加が続いています。

2)食物アレルギーの発症年齢と原因食物

原因食物のうち全年齢を通じて多いのは、卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、イクラ、果実、エビ・カニなど甲殻類、そば、大豆です。

食物アレルギーは、新生児、乳児、小児、成人で原因食物と症状の現れ方が違います。新生児期は牛乳が原因で嘔吐・下痢など胃腸症状が、乳児期は卵や牛乳の食物アレルギーが関与するアトピー性皮膚炎症状、小児期には運動が引き金となる小麦やエビの食物アナフィラキシー、成人では小麦やそば、甲殻類、果実、ナッツによるじん麻疹、口唇が腫れる口腔アレルギーとアナフィラキシーが多くなります。乳児期の主な原因である鶏卵と牛乳は、患者の半数が3歳までに、8割以上が学童期までに自然に耐性ができ、アレルギーを起こさなくなります。

3)食物アレルギーの症状と発現機序

患者さんの9割はじん麻疹など皮膚症状が出現し、3割に咳、呼吸困難など呼吸器症状、吐き気・下痢など消化器症状、1割に低血圧・意識障害が見られます。これらのアレルギー症状は、免疫の仕組み(すなわち免疫システム)が働いて発現します。それは、まず、免疫システムが原因食物を異物と認識しそれを攻撃するIgE抗体を作ることから始まります。これを感作といいますが、このIgEは腸管粘膜内にあるマスト細胞に付着します。そして、腸管に入ってきた原因食物と結合するとマスト細胞からヒスタミンという物資が放出され、気管支が収縮し、血管が拡張し、水分が漏出して低血圧など様々なアレルギー症状を起こします。これを即時型食物アレルギーと言います。

4)食物アレルギーが増えている理由

食生活の欧風化による高蛋白・高脂肪食品の増加、住居の密閉化によるダニ・カビの増加、ペットの増加、スギ花粉の飛散、大気汚染、ストレスの増加、清潔すぎる環境がアレルギー体質に傾かせるとことが分かってきました。食物アレルギー患者の増加も、卵や牛乳など魚以外の動物性たんぱく質、小麦の摂取量の増加、新しい果物、ナッツ類などの輸入の増加と関係していると考えられます。

小麦、エビ・カニ、果物にアレルギーのある患者さんがそれらを食べて運動してアナフィラキシーになる食物依存性運動誘発アナフィラキシーが増えています。これは食物アレルギーの増加と運動を楽しむ人が増えたことが関係していると思います。

果物や野菜は、口に含んだとき痒みを覚え口唇が腫れを起こす接触性じん麻疹である口腔アレルギー症候群の原因になることがあります。多いのはリンゴ、モモ、キウイ、メロン、大豆、サクランボですが、どの食物で起き得ます。

スギ花粉を始め樹木のハンノキ、シラカバ、イネ科のカモガヤ、キク科のブタクサ、ヨモギの花粉症が多くなっています。それらの植物の花粉に含まれるアレルギーの原因物質が果物や野菜の中にも共通して存在しているため花粉症の患者がある特定の果物や野菜を食べた時に口腔アレルギーを起こすことがあります。例えば、シラカバ花粉症の患者は、リンゴ、モモ、サクランボなどバラ科の果物、ブタクサ花粉症はメロン、スイカなどウリ科の果物の果物に口腔アレルギーを合併します。

また、食物アレルギーは口から腸管に入って感作されるだけではなく、原因食物が皮膚を通して体内に入りIgE抗体が作られる仕組みがあると分かってきました。事実、最近、小麦を加水分解して作った小麦成分を含んだ石鹸で洗顔していた女性が小麦製品を食べてアナフィラキシーが多数発症し社会問題となりました。次々に新しい美容用品が市販されていますが思いがけないアレルギーが発症するかもしれません。食物アレルギーになる乳児の牛乳アレルギーも口の周りに付着した牛乳がアレルギーを起こすと考えられるのです。

5)食物アレルギーの診断

食物アレルギーの診断は、医師による詳しい問診が欠かせません。疑われる原因食物、血調理方法、食べた時の症状と時間経過、発症年齢、食習慣、環境因子、既往歴、家族歴、アスピリンなどの服薬状況などを詳しく調べます。そのため食物日誌を付けると、食物と症状の因果関係を見出すことが出来ます。

医師は、アレルギー皮膚テストと血清中IgE抗体価の測定を行い、原因食物を推定しますが、必ずしも直接の原因ではない場合があり、確定するには食物除去試験と負荷試験が必要になります。

食物負荷試験は、疑わしい原因食物を1、2週間完全除去した食事を食べ、アレルギー症状が改善するかどうかを観察します。

食物経口負荷試験は、決められた手順により疑わしい食物をごく少量より始めて少しずつ増量して食べさせてアレルギー症状の発現を観察する試験です。

除去食物が多い場合には、栄養障害による貧血、肝障害、低蛋白症、電解質異常がないか血液検査を行います。

6)食物アレルギーの治療と予防

原因食物が分かったら最大限除去することが大切ですが、栄養バランスを崩さないよう代替食品を考慮します。加工食品にはアレルギー発症頻度の多い食物である卵、牛乳、小麦、エビ。カニ、そば、ピーナッツが含まれることが表示してありますので除去するのに役立ちます。

食物アレルギーが関係するアトピー性皮膚炎では抗アレルギー薬のインタールを内服し、じん麻疹、痒みには抗ヒスタミン薬を使用します。

ある薬物たとえば消炎酵素薬や整腸剤は、卵や牛乳の成分を含んでいるものがありますので、アレルギー患者さんは薬剤師に問い合わせて下さい。

20年前、妊娠中の食事から鶏卵、牛乳を制限することが勧められましたが、現在ではアレルギーを予防する証拠は得られていません。海外でもピーナッツアレルギーを予防する目的で除去しましたが、逆にピーナッツを食べていた子供はピーナッツアレルギーに少なかったと報告されています。

最近、食物アレルギーに対して原因食物を症状がでない少量から少しずつ食べて増量し、耐性を獲得する、すなわち体に慣らす経口免疫療法が試みられています。成功する例がある一方、症状が誘発される例もあり、まだ検討中の治療法です。

7)アナフィラキシーが発症した場合の対処法

症状が軽い場合は、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬を服用し、呼吸困難など重篤な症状がでたらエピペンの自己注射薬を大腿の外側に筋肉注射し、医療機関を受診します。必要なら救急車を利用します。

8)おわりに

食物アレルギーの原因食物を特定することも、予防することも容易ではありません。思いがけない食品、食事に原因食物が入っていることがあり、いつアナフィラキシーが起きるか予想も難しいですが、食物アレルギー日誌をつけ、誘発要因を避けていけばアレルギーも鎮まり発症頻度は減ってきます。