診療科別専門医療

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

我が国の3大死因は、悪性腫瘍(癌)、心臓疾患、肺炎ですが、最近増加しているのが肺気腫に代表される慢性閉塞性肺疾患(COPD)で将来第3位になると予想されています。同じような病気に気管支喘息がありますが、喘息死は減少しています。現在、COPDの高齢者患者は530万人(8.6%)に登ると推定されていますが。実際に治療を受けている患者は17.5万人(3.3%)に過ぎず氷山の一角です。COPDの原因の多くは喫煙です。

喫煙と呼吸器障害

呼吸に関係する臓器・器官は、空気の通り道(気道)である鼻腔、口腔、気管支と肺臓があります。気管支は先に行く(末梢)ほど分岐して細く、内径も狭くなります。その先はブドウの実のような多数の小さな部屋(肺胞)に繫がり、その壁は毛細血管で張り巡らされています。その肺胞では酸素が血管に取り入れられ、一方不要(有害)となった二酸化炭素が排出されます(ガス交換)。
タバコの煙の中には200種類以上の有害物質が含まれています。この中にはタール、ニトロソミンなどの発癌物質、一酸化炭素、ホルムアルデヒドなどの細胞傷害物質、依存症となるニコチンなどがあります。これを吸い込むと気道や肺胞が傷つきガス交換が障害され、障害の種類によってCOPD(肺気腫/抹消気道病変型)、間質性肺炎など様々な呼吸器病あるいは各臓器の癌が発症します。これ以外にも有害物質は血流に吸収されて間接的に脳、循環器、消化器、泌尿器などの臓器も障害されます。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

多くはタバコの煙、その他排気ガス、PM2.5、粉塵、家庭内燃焼ガスなどの有害物質を長期間吸いこむことにより炎症が起き、肺胞の破壊(気腫性病変)、末梢気道の狭窄・肥厚(炎症性病変)が生じ徐々に進行していきます。
1.肺気腫病変
気管支の末端やその先の肺胞の壁が破壊され袋状に拡大して、弾力がない萎んだゴム風船のごとく気流の流れが悪くなり(気流閉塞)、ガス交換が困難になります。症状は、階段や坂道を昇る時に酸素不足となり息切れ(労作時呼吸困難)を自覚することから始まり、進行すると早い段階から呼吸不全を起こし、平地を歩くだけ、日常の生活動作だけでも息切れするようになります。
2.末梢気道病変
長期間気管支に炎症が続いた結果、気管支の粘膜・壁が肥厚し空気の通過する内腔が狭くなって、同時に気道分泌物の痰が増加して気流が閉塞された状態です。そのため慢性的な咳と痰がみられます。

上の二つの病変が様々な割合で起き、空気の流れ(気流)が閉塞してガス交換が障害
され、次第に労作時の呼吸困難(動くと息切れ)、慢性の咳・痰が出現します。このような気流閉塞が年齢とともに非可逆的に進行する病気がCOPDです。

COPD診断のための検査

COPDが疑われたら、次のような検査を行い確定診断と重症度の評価が行われます。
①呼吸困難症状の評価
②胸部X線撮影・・・肺の過膨張
③胸部CT(コンピューター断層写真)検査・・・気腫性陰影、気道壁の肥厚
④呼吸機能検査:・・・閉塞性換気障害
⑤血中酸素飽和度、動脈血ガス分析・・・安静時・運動負荷時の低酸素

呼吸困難の重症度の目安(Fletcher-Hugh-Jonesの分類)

1度:同年齢の健常者と同様の労作ができ、歩行、昇降も健常者なみにできる。
2度:同年齢の健常者と同様に歩行ができるが、坂、階段は健常者なみに歩行できない。
3度:平地でさえ健常者なみには歩けないが、自分のペースなら(1.6km以上)歩ける。
4度:休みながらでなければ(50m以上)歩けない。
5度:会話、衣服の着脱にも息切れがする。息切れのため外出できない。

呼吸機能検査

呼吸機能検査には肺の大きさを調べる肺活量検査のほかに、最初の一秒間に肺の空気をどれだけ一気に吹き出せるかを測定して気流(空気の流れ)の良し悪しを調べる検査方法があります。これを1秒量といい、換気の状態を表します。全部吹き出した量の70%以下のとき閉塞性換気障害と診断します。気道(空気の通り道)が狭い閉塞した状態のため一気に吹き出すのが困難です。閉塞性換気障害を示す疾患には一時的に気道閉塞するが回復する(可逆的)気管支喘息と、閉塞が非可逆的にゆっくりと進行するCOPD(肺気腫型、抹消気管支病変型)があります。気管支喘息とは異なる病気ですが、慢性化し、持続した気流閉塞のある喘息患者はCOPDとの区別が困難です。高齢者ではCOPDと気管支喘息の合併も珍しくありません。
いずれの場合も加齢に伴っても呼吸機能が低下しますので、若い年齢に喫煙したことが高齢になって影響し、COPDが現れます。

COPDの合併症と併発症

COPDの患者さんは長期間の喫煙がある中高年者が多いため、喫煙や加齢に伴う併発症が多く見られます。呼吸器疾患として重症化しやすい肺炎、気管支喘息(合併率30%)、間質性肺炎、肺癌(合併率6%)、気胸の合併があり、その他にもCOPDの肺の組織に起きている炎症から産生されるサイトカインという物質が全身を巡り、いろいろな臓器の障害を誘発します。そのためCOPD患者さんは心・血管障害(狭心症、不整脈、心不全)、糖尿病、栄養障害、骨粗鬆症、骨格筋機能障害などが併存していますので、COPDだけでなくそれらを含めた包括的な全身的治療・管理が必要となります。

COPDの治療

COPDの病気の完治は難しいので、健康人と同じ様に日常生活が送れるようになる事が大切です。そのため治療は次を目標にします。
1.症状とQOL(生活の質)の改善
2.運動能力と身体活動の向上と維持
3.増悪の予防(呼吸器感染と大気汚染)
4.病気の進行抑制:禁煙
5.全身併存症と肺合併症の予防と治療
6.生命予後の改善

治療法

包括的治療は自己管理が大切で、その内容は禁煙、薬物療法、呼吸リハビリテーション、酸素療法、栄養管理、全身持久力・筋力トレーニングの運動療法です。特殊な治療として換気補助療法、外科・内視鏡療法があります。

1)禁煙
原因となる喫煙の中止がCOPD治療の基本です。中止したいという動機付けが欠かせません。
①禁煙治療(詳細は禁煙外来のサイトを参照)
喫煙はニコチン依存という薬物依存と言えます。一般に、起床後30分以内に最初の
タバコを必要とし、1日1箱より多く(21本以上)吸う場合は、ニコチンへの依存度が高い喫煙者です。依存者はタバコをやめると、イライラ感、不安、集中困難、眠気などの離脱症状が現れるので、医師の指導のもと行うニコチンを薬物として補いつつ離脱させるニコチン置換療法とチャンピックスの内服による喫煙依存離脱法があります。

2)薬物療法
COPDの呼吸困難・肺機能障害の重症度に応じて使用する治療薬が異なります。
①気管支拡張薬 → 気管支喘息サイト
気管支・肺胞の閉塞性障害に対して使用される薬物は、吸入性気管支拡張薬のβ2刺
激薬と抗コリン吸入薬、経口するテオフィリン薬です。
抗コリン薬の副作用として前立腺肥大患者で尿閉を起こし、緑内障を悪化させることがありますので注意が必要です。
②ステロイド薬 → 気管支喘息サイト
中等症以上のCOPDは全身的副作用の少ない吸入ステロイド薬の吸入を併用します。COPDの増悪に対しては経口・注射などの全身的投与も行います。
③その他:喀痰の多いCOPD患者には、いろいろな去痰薬が用いられます。

3)酸素療法:
COPD患者に対する長期在宅酸素療法は、低酸素血症を改善して寿命を延ばし、肺高血圧や肺性心の進行を阻止し、うつ傾向など精神神経の機能障害を改善し、入院治療を減らす効果があると言われています。

5)呼吸リハビリテーション:
呼吸療法士、理学療法士のもとで口すぼめ呼吸、腹式呼吸などの呼吸リハビリテーションの訓練を受けます。

6)栄養管理:
COPD患者の呼吸筋力の低下を防ぐため十分な蛋白を含む食品を積極的に摂るようにします。肺性心による心機能の低下があるときは、食事の塩分を7~8g以下に制限する必要があります。

7)感染症予防
呼吸器感染症、特にインフルエンザ感染、肺炎球菌感染は、COPDを急性増悪させますので、高齢のCOPD患者には感染予防のため肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種が勧められています。