診療科別専門医療

腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術とは

腹腔鏡下手術腹腔鏡下手術とは、おなか(腹腔内)を炭酸ガスで膨らませて、おへその周囲に5~12㎜の穴を4-5ヵ所開け、そこから腹腔鏡(カメラ)や専用の電気メス等の手術器具を挿入し、テレビモニターに映し出される腹腔内の様子を観察しながら手術を行う方法です。

腹腔鏡下手術イメージ

腹腔鏡下手術の特徴は?

良いとされる点

  1. 創が小さい。
  2. 術後の痛みが少ない。
  3. 術後の腸の動きはじめるのが早いため、早期に食事を開始できる。
  4. 腸の癒着による腸閉塞の率が低い。
  5. カメラを近接することで開腹手術のときに見落とされていた細かいところまで観察でき、より正確な手術が可能になった。

気になる点

腹腔鏡下と開腹の術後創の比較腹腔鏡下手術は、通常の開腹手術に比べて手術難度が高い分、手術時間が約1.5倍程度長くなることが多い。また、かなり完成された技術となってはいるものの歴史の長い開腹手術に比べるとまだ執刀医による技術の差が出やすい。

腹腔鏡で治療できる病気(佐々総合病院)

良性疾患・・・胆石症、鼠径ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなど
悪性疾患・・・胃がん、大腸がん、直腸がん、(膵臓がん)など
急性腹症・・・虫垂炎、腸閉塞、消化管穿孔などの診断治療

※腫瘍が大きすぎるもの、癌が他の臓器に浸潤しているものは基本的に開腹手術にて対応しています。
※心臓や肺の機能が落ちている方の場合は、リスクが高くなる可能性があります。
※その他、腹腔鏡下手術に関するご質問等がありましたら、消化器外来で専門医(内視鏡外科技術認定医)がご説明いたします。お気軽にご受診ください。

腹腔鏡手術について

外科 鈴木隆文 医師
広報誌 2015年3月号「ささ舟」より抜粋

腹腔鏡手術の報道について

昨年、地方国立大学病院での腹腔鏡手術による事故が大々的に報道されました。それ以後、周囲の知人からも「腹腔鏡の手術ってそんなに危険なものなの?」 と、たびたび聞かれるようになり腹腔鏡に携わる外科医としては何か自分が否定されたようなショックをうけました。しかし、ある意味においてはこのようなことを反面教師として自己を見つめなおす必要性も感じました。

腹腔鏡手術とは?

そもそも、手術というものは人間を全身麻酔という方法で痛みを感じないようにして外界からの攻撃に無抵抗にさせた状態で行うものですから、開腹手術、腹腔鏡手術ともにリスクを伴うものであることはまちがいありません。

ましてや腹腔鏡手術は歴史が浅く、開腹手術とは別の知識、技術が必要であるため、すべての外科医が十分な技術を習得しているとは言えないのが現状です。よって相対的に難易度は上がります。しかし、ではなぜ今 腹腔鏡手術が脚光を浴びているのでしょうか?それは上級者によって確実におこなわれた場合には、創を小さくするだけではなく、手術の細かな操作による高度な治療がより正確にできるという、まさしく患者さんにやさしい手術だからです。

腹腔鏡手術と携帯電話

ここでちょっと 手術を電話機に例えてみましょう。
まだ固定電話が主流であったバブルのころに携帯電話は登場しました。しかし販売当時は値段が高いうえに重さが1kg以上あり肩からかけて運ぶようなものでしたので、必要のない、単なる贅沢品と思われていました。

そのため現代のように誰もが自由に持って歩け、携帯電話(スマ-トフォン)によってさまざまなことができるようになるとは想像もしませんでした。その一方で、この携帯電話が便利さとともに、礼儀やマナーの喪失に始まる社会に対する悪影響も少なくはないと皆さんも感じているのではないでしょうか。

進化というのは常に裏の顔も隠し持っているものです。この数年で腹腔鏡手術も開腹手術から携帯電話以上のスピードで進化しているように思います。

そして同じように、腹腔鏡手術もきっと患者さんに対する誠実な気持ちを欠き、手術という儀式に対するマナーや作法を守らなければ、その裏の顔をのぞかせてくるものなのかもしれません。
この文章を書きながら あらためて気を引き締めなおしていくその必要を痛感いたしました。

腹腔鏡手術導入にあたり~主として技術面からの準備~

  1. 十分縫合手技を練習すること
  2. 助手としてのトレーニングを十分に行うこと
  3. 基本操作が十分理解できていること
  4. 開腹手技との相違点を十分理解できていること
  5. 助手に頼らず操作ができる自信があること
  6. 器具の使い方、利点欠点を十分理解していること
  7. あらゆるトラブルシューティングを身に着けておくこと
  8. 個々の手術に対する十分なシミュレーションができていること
    (助手、NS教育を含めて)
  9. 手術所見を当日記載し、ビデオ編集もおこなうこと
  10. チーム(外科内部のみならず、看護部をはじめとする医療チーム)から術者にふさわしいと認識されていること
  11. 指導医は基本的にすぐに変われるポジションで管理すること
    (第一助手よりも術者のバックアップもしくはカメラ助手など)
  12. 病院の代表者としての心構えで患者に接し、手術を担当すること

最後に

最後に、私はいままでいくつかの病院で腹腔鏡手術の導入に携わってまいりました。そのなかで特に心がけていることは、患者さんに腹腔鏡手術の良いところとまだ不十分なところの両面から理解して手術を受けていただけるように十分に説明すること、そして患者さんと我々が同じ方向を向いて治療方針を決定し、安全確実に病気を治し退院していただけるような技術を提供することです。

当佐々総合病院でも、さらに安全、正確な手術をするために最新の機器を導入いたしました。現場スタッフも、自己に厳しい導入姿勢を続けていくことで皆様に満足していただける診療を行っていこうと考えております。

今後ともよろしくお願いいたします。