大腸がん

大腸の働き、解剖

大腸は約1.5~2.0mくらいの管状の臓器です。大腸は結腸、直腸に分けられ、結腸は盲腸、上行腸、横行結腸、S状結腸に分けられます。大腸は水分、ミネラルを吸収し便を作る働きをしています。

大腸がんとは

大腸がんは大腸の粘膜から発生する悪性腫瘍です。
大腸がんの発生には生活習慣がかかわっております。運動不足、野菜の摂取不足、飲酒、肥満がリスク因子として挙げられます。生活習慣の欧米化が関与していると考えられています。

大腸がんの症状

早期大腸がんではほとんどが無症状です。
進行胃がんでは血便や下血、便秘、下痢などの症状が出現することがあります。
さらに進行すると腸閉塞になり、便が出なくなり、腹痛、嘔吐などの症状がおこることもあります。
*便潜血検査:便の中に微量の血液が混じっているかどうかを調べる検査です。
大腸がんの約30%以上が便潜血検査により発見されております。

大腸がんの診断のための検査

大腸がん

・血液検査(腫瘍マーカー)
・下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)
・下部消化管造影検査(注腸検査)
・CT検査
・MRI検査
などがあります。

大腸がん

大腸がんのステージ

・大腸の壁にどれだけ深く入り込んでいるか。(深達度 T因子)
・リンパ節に転移しているか。(リンパ節転移 N因子)
・他の臓器に転移しているか。(遠隔転移 M因子)
によってステージ分けされます。

大腸がん

深達度(T因子)

大腸の壁にどれだけ深く入り込んでいるか。

T1は早期がん T2―T4は進行がんとなります。
T0 がんを認めない
Tis がんが粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない
T1   がんが粘膜下層までにとどまり、固有筋層に及んでいない
T1a がんが粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が 1000μm 未満である
T1b がんが粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が 1000μm 以上であるが固有筋層に及んでいない
T2   がんが固有筋層まで浸潤し、これを越えていない
T3   がんが固有筋層を越えて浸潤している
漿膜を有する部位ではがんが漿膜下層までにとどまる
漿膜を有しない部位ではがんが外膜までにとどまる
T4a   がんが漿膜表面に接しているか、またはこれを破って腹腔に露出している
T4b   がんが直接他臓器に浸潤している

大腸がん

リンパ節転移(N因子)

リンパ節に転移しているか。

大腸がんは腸管近傍のリンパ節に転移を来すことが知られており、リンパ節転移の有無と転移数で分類されます。
NX  リンパ節転移の程度が不明である
N0  リンパ節転移を認めない
N1  腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が 3個以下
N1a 転移個数が1個
N1b 転移個数が2から3個
N2  腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が 4 個以上
N2a 転移個数が4から6個
N2b 転移個数が7個以上
N3  主リンパ節に転移を認める。下部直腸がんでは主リンパ節および/または側方リンパ節に転移を認める

大腸がん

遠隔転移(M因子)

他の臓器に転移しているかどうか。
・リンパ行性転移:リンパ管を介して転移(領域外)
・血行性転移:血流にのって転移(肝、肺、脳、骨など)
・腹膜播種性転移:(腹腔内にばらまかれる)

大腸がん
出典:国立がん研究センターがん情報サービス

大腸がんの治療

内視鏡治療、手術、抗がん剤治療が主な治療法です。
術前のステージによって治療方針が決まります。

大腸がん

I.内視鏡治療

リンパ節転移の可能性のない粘膜内がん、粘膜下層への軽度浸潤がんに対しては内視鏡的切除(ポリペクトミー、EMR、ESD)の適応となります。

大腸がん

Ⅱ.手術

・開腹手術
腹腔鏡手術
*当科では基本的には腹腔鏡手術を行っております。

大腸がん

術式

腫瘍の場所により術式を選択します。
腫瘍から約10cm離して腸管を切除、腫瘍を周囲のリンパ節も同時に切除します。

結腸がん

・結腸右半切除術

大腸がん
出典:日本消化器外科学会Webサイトより(2024年5月)

 

・横行結腸切除術

大腸がん
出典:日本消化器外科学会Webサイトより(2024年5月)

 

・S状結腸切除術

大腸がん
出典:日本消化器外科学会Webサイトより(2024年5月)

直腸がん

・直腸切除術

大腸がん
出典:日本消化器外科学会Webサイトより(2024年5月)

 

・直腸切断術(マイルス手術)

肛門および括約筋も切除する。永久人工肛門を造設する。

大腸がん
出典:日本消化器外科学会Webサイトより(2024年5月)

術後経過

通常術後は7-10日程度で退院となります。
例)結腸がん手術パス

手術
前日
手術
当日
術後
1日目
術後
2日目
術後
3日目
術後
4日目
術後
5日目
術後
6日目
術後
7日目
入院 離床
水分摂取
流動食 3分粥 5分粥 全粥 常食 退院

合併症

出血、感染(腹腔内膿瘍、創感染)、縫合不全、肺炎、腸閉塞、肺塞栓(エコノミークラス症候群)
その他(心、脳合併症など)

術後後遺症(とくに直腸がん)

排尿障害
性機能障害
排便障害

術後ステージ

手術後に病理検査により確定されるステージ。このステージにより術後の治療方針が決まります。

Ⅲ.抗がん剤治療

①術後補助化学療法:StageIII、再発リスクの高いStageIIの大腸がんに対して、微小な遺残腫瘍による再発を予防するために手術後に行う化学療法(3~6か月)

②切除不能な進行がん、再発大腸がんに対する化学療法:生存期間の延長を目的として行う化学療法。