診療科別専門医療

乳房再建術

乳房再建術

はじめに

当院は平成30年4月24日付けで日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会から乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施施設認定を受けました。
これにより乳がんの手術で失われた胸の形をシリコンインプラントを用いて再建する手術治療を当院で行うことが可能になりました。

一般的に手術を主とするがん治療では病気の部位を切除し、化学療法や放射線療法など必要な追加治療を受け、一定の期間で転移や再発が確認されなければ完了というものだと思います。
もちろん乳がんの治療でも、がんを切除することは非常に効果的で重要な手段です。しかし、必要に迫られてのこととは言え、女性にとって乳房を失うことは肉体的にも精神的にも大変辛いことです。
特に乳がん患者さんは比較的若い方も多く、治療後の体の形の変化がその後の日常生活の質に深く影響する要因となります。そのため、形成外科による乳房再建は乳がん患者さんのがん治療を乗り越えられてからの人生を、より前向きに過ごしていただく支えになりたいと発展してきた分野です。

エキスパンダー/インプラント手術治療のながれ

乳房再建術

エキスパンダー/インプラント手術治療は、基本として2回に分けて行われます。

①1回目の手術ではエキスパンダーと呼ばれる胸の形に似せた水風船のようなバッグを胸の筋肉(大胸筋)の下に入れます。
➁1回目の手術後、外来に通院しながらエキスパンダーに生理食塩水を注射で注入し徐々に膨らませます。
➂中のバッグが膨らむことで乳がん手術により平らになった胸の皮膚を胸の形に引き延ばします。皮膚の延長には約6か月かかります。
④十分に胸の皮膚が延長されてから2回目の手術となります。エキスパンダーが入っていた筋肉の下のスペースに、より精巧に胸の形や柔らかさを再現したシリコンインプラントを入れ替えて乳房を再建します。

皮弁再建とインプラント再建―再建方法の選択肢

この再建法は平成25年から、保険診療で受けられるようになりました。
それ以前の保険診療での乳房再建治療は、自家組織(自分の体の組織)による皮弁再建という、背中やお腹、殿部から皮膚や皮下脂肪、筋肉の一部を移植する方法が主流でした。

自身の体を再建の素材に用いることで、より自然で再現性に優れた治療法であることは確かですが、一方で皮弁を採取する部位に傷が生じるという負担があります。
インプラント再建では体の他の部位への負担を最小限にしながら、乳房の形態を再現することができます。ただし人工物を用いるという別な負担があることも事実です。ですので、どちらかの治療法が絶対的に「正しい」「優れている」というものではありません。

皮弁再建とインプラント再建、それぞれの治療法の良いところや得意なところ、その反面の負担となるところや起こりえるトラブルについてきちんと理解した上で、患者さん自身が納得、満足できる自分にあった治療法を選べる選択肢が増えた、とお考えください。もちろん患者さんだけでどちらの治療がより自分に合っているのかを判断するのは難しいと思います。診療の中でそれぞれの治療法について詳しくご説明しながら患者さんの理解、選択のお手伝いをさせていただきます。
※皮弁再建をご希望される患者様に対しては当院より専門施設へご紹介いたします。

ご興味のある患者さんがいらっしゃいましたら、お気軽に形成外科外来までご相談ください。

佐々総合病院 形成外科
Tel.042-461-1535(代表)